Something Orange

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「生きている」とはどういうことか。人間という名の音楽に耳を澄ませる。

 歯が痛かったこともあって、いままで欠かさず続けてきたブログを四日も休んでしまった。

 痛恨である。いったん流れを止めてしまうとまた書きはじめることが億劫だったりする。

 まあ、たった数日だけ休んだくらいではどうやって書いていたのか忘れてしまうということはないけれど、それでも何となく書きづらくなる。今後は、なるべく継続して書くようにしよう。

 さて、そういうわけで今回はリハビリとして、アニメもマンガも関係ない(ほんとうはものすごく関係がある)話をしよう。「運動」の話だ。

 ぼくはふだん、いろいろと本を読んでこういう抽象的というか、ろくに需要もないようなことを延々と考えているのだけれど、あまりブログの記事にしたりはしない。

 だれも読みたくないだろうと思うからだ。しかし、たまには良いだろう。ほんとうはぼくのなかではすべてはひとつで、連続している問題なのだ。

 そう――どこから書きはじめたら良いだろう。つまり、「いのち」について話したいのだ。

 「いのち」とは何なのか。「生きている」とはどういうことなのかについて興味がある。

 どうすれば「ほんとうに生きている」といえるのか。「充実」とは、「しあわせ」とは何なのか。そのようなことを知りたい。

 だから、毎日、一冊か二冊くらい本を読んでは考えている。考えつづけている。

 たとえば、最近は坂口恭平の『お金の学校』を読んだ。これは、タイトルから予想される通り、「お金」と「経済」について書かれている本だが、類書とはだいぶ異なる。

 とても具体的な「お金の稼ぎ方」について書かれているわりに、思想的な深みがあるのである。

 坂口さんは「経済」について、ひとつの「流れ」だという。どこからか流れてきてどこかへ流れていくもの。これは理解できる(ような気がする)。

 お金や資本の流動はもちろん、その他にも経済はある。そして、そのすべてが何かしらの「流れ」なのだ。

 この世ではじつにさまざまなものが「流れている」。enegy flow。エネルギーの流れ。それが地球であり、宇宙であり、世界だ。

 その意味は人も、というかすべての生きとし生けるものはひとつの「流体」であり「経済」であり「音楽」なのだと思うわけだ。

 人は生きている。鳥は生きている。虫は生きている。それはたしかだけれど、それでは具体的にこの物質、この分子が生きているということはできないだろう。

 人の肉体を構成する分子はわずか数か月のあいだにすっかり入れ替わってしまうという。

 ようは人間とはある物質によって成り立っているものではなく、無数の分子が均衡を保っているひとつの「状態」をそう呼んでいるに過ぎないのである。

 いい換えるなら「ただはてしなく流れている」その状態こそが生命なのであって、それは一刻たりとも止まることがない、止まったら死んでしまうということ。

 この「流れ」の原理をべつのいい方で「動的平衡」という。

 この言葉も本で読んで知った。科学の言葉ではあるが、ある意味ではイメージしやすい。動きながら平衡を保っているもの。

 つまり、人とは、いのちとは、絶えず変化しながらどうにかバランスを保っている「行く川の流れ」なのだということだ。決して堰き止めることができない悠久の流れ。

 川は流れているからこそ川なのであって、流れていない川というものはない。同じように、変化しつづけていない生き物はいない。

 あたりまえのことだ。そう、いたってあたりまえのことであるはずなのだが、ぼくたち人間はしばしばそのことを忘れて、この流れをとどこおらせようとする。

 この上は変化したくない、「いま」が永遠に続けば良いと考える。

 いのちの流れを堰き止めようとすることとは、つまり自分のいのちを「所有」しようとすることである。

 自分のところへ流れてきたものを、それ以上どこへもやろうとしないこと。フロイトはこの「所有欲」を人間にとって最も根源的な欲求とみなしたという。

 しかし、そうやって「所有」を試みると、必然的に流れは「よどむ」。この「よどみ」こそが、現代社会のさまざまな問題のひとつの原因となっているのではないだろうか。

 ほんとうなら自然と流れているはずのものをよどませることは、結果として病や狂気を生むのである。

 現代人は「時」を認めない。それを支配しようとする。だが、それは不可能なことなのだ。そもそも「この宇宙の黄金律」に反しているからである。

 あなたも「エントロピー増大の法則」のことはご存知だろう。この宇宙ではいつもエントロピーは増大しつづけているので、つねにいのちは壊れていく。

 それどころか、宇宙全体が何百億年をかけて壊れつづけている。

 その「流れ」を止めることはできないし、止めるべきでもない。「時の流れ」に逆らうことは不可能である上に人を病ませるからである。

 それでも、もちろん、人はもう壊れたくない、と思う。いつまでも同じままでいたいと願う。しかし、これは矛盾なのだ。生きるとは壊れていくということにほかならないのだから。

 あたかもエントロピーの増大に逆らうようにして造っては壊れ、造っては壊れ――そしていつか、決定的に壊れ切る。それを人は「死」と呼ぶだけのことなのである。

 亡き栗本薫が代表作『グイン・サーガ』の主題は「時」だといっていた。このばあいの「時」とは仏教でいう「無常」と同じことだと思う。

 つねに状況は変化していくということ。大宇宙の法則、「エナジー・フロー」の原理。

 だからぼくもまた、その流れのなかにあり、否、ぼく自身が流れそのものであり、いま、この時も流れつづけている。

 それが「生きている」ということであり、その実感こそが「しあわせ」というものなのではないだろうか。

 というようなことを、毎日、だらだらと考えているのだが、どうだろう。伝わるだろうか。

 何かあやしげな宗教とか自己啓発みたいなことをいい出した、と思われるかもしれない。そうなのだ。ぼくは現代において少しでもマシな宗教や思想や啓発を生み出そうとしているのだろうと思う。

 考えつづける。

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