Netflix版『シティハンター』は「生きることの猥雑と混沌」を全肯定する最新最高の新宿映画だ!

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【暗黒をも頽廃をも受け入れる犯罪都市とその狩人】

 先日配信開始した『シティハンター』(と『T・Pぼん』)を見るためにNetflixを再開しました。

 で、さっそく見たのだけれど、これが評判に違わぬハイクオリティ。このところ、『沈黙の艦隊』(秀逸!)や『ゴールデンカムイ』(傑作!)など、とてもまともに実写映像化できるとは思えないマンガ作品が「原作に忠実(という印象をあたえるよう)に」映像化される例が続いていて、何だか風向きが変わって来たなと思っていたのですが、この『シティハンター』もその例に並ぶことになりそうです。

 いろいろな文脈で語ることができそうなものの、まず何といっても一本のエンターテインメントとして破格に面白い。

 続出する下ネタといい、洗練されたガンアクションといい、まさにかつての『シティハンター』そのものでありながら、どこか決定的に新しい最新最高の『シティハンター』として、ちょっと文句をつけられない仕上がりといって良いのではないでしょうか。ほんとうに素晴らしい。

 この作品については倉本圭造さんが「『シティーハンターNetflix実写版』が風穴をあける「過剰な性的潔癖主義の抑圧」」というタイトルで記事を書いていて、これが非常に納得度の高い内容でした。

画面に出てくるあらゆる細部の表現からなんかなぜか「自分の過去の人生の経験」の中からいっぱい思い出すことがあるし、なんなら新宿っていう街がものすごい魅力的に思えてくる。

なんかこの「新宿を描いた映画」っていう要素が、この映画を名作にしてる感があると思うんですね。

「おしゃれで洗練された街=渋谷」みたいな方向ではなくて、色々と「正しさ」から外れた存在にも居場所がある、「乗降客数世界一の新宿」が持つ魅力が描かれていたところに、「Netflix版シティハンター」の素晴らしさがあったように思って、その話をぜひさせてほしいんですよね。

 つまりは、このNetflix版の『シティハンター』は「渋谷的洗練」に対置される「新宿的猥雑」を精密に活写した作品だったと。

 何ならわれらが都会の狩人〈シティハンター〉こと冴羽亮は、「新宿的なるもの」の象徴にして番人といってすら良い人物であり、かれの行動原理そのものが何ともいえず「猥雑さの肯定」を示しているのだと感じます。

 そもそも新宿、とくに歌舞伎町という都市は、薬物や売春といったさまざまな社会問題の温床となっている一面を持ちながら、そのカオスな風景のなかに「どこにも行き場所がない人間」を受け入れてくれるキャパシティの大きさを見せる日本でも最も猥雑な街だといえるわけですよね。

 また、『新宿鮫』とか『不夜城』みたいなハードボイルド/ノワールの傑作の舞台になってきた街でもあります。菊地秀行の『魔界都市〈新宿〉』というシリーズもありますね。

 で、この『シティハンター』という作品は、そういったカオスをひきうけて、その魅力を徹底的に前面に打ち出してきている。それがこのポリコレ時代にあって、何とも心地良い。

【「ポリコレを無視した」わけではない】

 ただ、倉本さんも書いているように、その描写を「ポリコレを打ち破った」みたいに解釈することはおそらく間違えていて、その一方でおそろしく繊細にどこまでの性的描写が許容されるか考え抜かれている様子がある。ただ奔放にやりたい放題をしているわけではないんですよね。

 そういう意味では、以前に公開されたアニメ映画版『シティハンター』がやはり昭和と平成の『シティハンター』を踏襲することに終始していたのに対し、まさに令和の映画に仕上がっていると思います。

 歌舞伎町はたしかにサイバーパンク的に危険で猥雑だけれど、そこでしか生きられない人もまたたくさんいるんですよね。

 そういう「世間並みのあたりまえの人生」から逸脱した生き方をしている人を否定する社会は、綺麗ではあってもどこかで狂っているのではないかという気がぼくにはします。

 もっというなら、人並みに「しあわせ」にならなければならない、「良い人生」を送らなければならないという空気は、この社会にものすごい抑圧をもたらしているのではないかと思うのです。

 どんなにでたらめでもめちゃくちゃでも生きていることそのものを祝福することができなければ、この社会はそれ自体がひとつの大きな檻にしか過ぎなくなってしまうのではないでしょうか? 

 ともかく、鈴木亮平が圧巻の演技を見せる『シティハンター』、大傑作とはいかないまでも、道標的な新作でした。いまオススメの映画です! Netflixを視聴可能な環境にある方は、ぜひどうぞ。

【さいごに】

 最後までお読みいただきありがとうございます。

 この記事は「海燕(オタクライター)」が全文を執筆しました。

 海燕は現在、マルハンさま運営のウェブメディア「ヲトナ基地」にて、サブカルチャー系の記事を連載しています。そちらもご一読いただければ幸いです。

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 それでは、またべつの記事でお逢いしましょう。

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