「どろどろえろえろ」から「げきあまぴゅあぴゅあ」まで、いまが旬なオトナの恋愛マンガ20選!

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【プロフィール】

 プロライターの海燕です。書評や映画評などを掲載しています。

 現在、マルハン東日本さまのウェブサイト「ヲトナ基地」で定期的に記事を掲載中。

 お仕事の依頼、個人的な連絡などは以下のページからどうぞ。

 それでは、記事をお読みください。

【はじめに】

 恋愛マンガが好きです(いきなり)。

 私生活ではほとんど色恋沙汰とは無縁の人生を過ごしてみごと未婚のヲタクおっさんになったぼくなのですが、「他人の恋愛」を読むことは大好きで、いままでそれはそれはたくさんの恋愛小説やらマンガを消費してきました。

 そのなかには『ハチミツとクローバー』や『推しの子』のような「これ、いまどき、みんな読んでいるのでわ?」と思われる定番の名作もあれが、タイトルは挙げませんが「むしろこれ、いったいだれが読んでいるんだろ?」というマイナーな作品もあるわけなのですが、いずれもぼくのココロのなかで宝物になっています。

 いやあ、ひとを好きになることって素晴らしいですね! ぼくもステキな恋愛をしてみたい。条件は超悪いけれど!

 まあ、どこかの少年マンガの主人公のように99%ダメでも1%の確率に賭けるような根性は持ち合わせていないので、恋愛ごとはフィクションで愉しむことにしておきたいと思います。

 ぼくにもどこかのスタンド使いのようにリア充を爆発させる能力があったら! いやまあ話が進まないからルサンチマンの開陳はこのくらいにしておきましょう。

 さてさて、そういうわけで今回は個人的に好きな恋愛マンガを20作並べてみることにしました。少女マンガや少年マンガを挙げはじめるとキリがないのであえて「大人向け」の作品に限定しています。

 具体的には、カップリングの双方が高校生以下の作品は除きました。さらに「いわゆる男性向け」、つまり青年誌の掲載作品を中心にしたラインナップになっています。

 いや、べつにあえて「いわゆる女性向け」作品を排除する理由もないのですけれど、この記事を書くまえに参考と思って恋愛マンガを検索してみたところ、やっぱり「いわゆる女性向け」の作品が並んでいることが多いようだったのですね。

 ぼくは少女マンガを読みあさって育った人間なので、とくに女性向け恋愛マンガに抵抗はありませんが、情報の希少性という意味では「いわゆる男性向け」のマンガをまとめたほうが価値があるのかなと判断しました。

 今回泣く泣く除いた『ヤンキー君と白状ガール』とか『事情を知らない転校生がグイグイくる。』とか『ディアティア』とか『君は放課後インソムニア』とか『氷の城壁』あたりはまた何かの機会にまとめようと思います。

 いや、面白いんだよ、『氷の城壁』! でも、何かの条件を決めないと際限がなくなってしまうからね……。

 それでは、いきましょう。「オトナの恋愛マンガ」20作です!

①此ノ木よしる『進撃のえろ子さん~変なお姉さんは男子高生と仲良くなりたい~』

 さいしょからこれかい、という気も。まあいいけど。

 さて、『進撃のえろ子さん』というタイトルを見るかぎり、いかにも「青年誌掲載で男性向けのエッチなマンガ」という印象になってしまう作品ですが、じつは作者は女性、主人公も女性、さらには対象読者も女性なんじゃないかな?というマンガです。

 日ごろ、「えろ子さん」というアカウントでエロティックな妄想を情報発信しつづけ、何を間違えたのかインフルエンサーになってしまったお姉さんのお話。

 美人でスタイルも良い、仕事もできる「えろ子さん」なのですが、その「ぼやぼやーっ」とした性格が災いするのかどうか、カレシができません。

 しかし、ちょっとしたことからいくつも年下の少年とつきあうことになってしまいます。必然、えろ子さんの妄想は爆発してしまうわけですが――とストーリーは続きます。

 男性が女性にいろいろ幻想を抱く傾向があることは広く知られていますが、女性だって男性でたくさん妄想するのだ、というテーマかもしれません。男女を問わずオススメのライトタッチなラブコメディです。

②榎本あかまる『この会社に好きな人がいます』

 まあタイトルからわかるかと思いますが社内恋愛もの。オトナが主人公になると当然、仕事の話が絡んでくるわけで、「いわゆる社会人」が主人公となる可能性が高いわけなのですが、そうなると必然として「秘密の社内恋愛」というコンセプトも生まれてくるのですね。

 話の筋道としては当然、「みんなにつきあっていることがバレてしまったらどうしようどきどき」という路線で進むものの、わりと「らぶらぶ」で「あまあま」なストーリーなので、とくにサスペンスフルでどろどろな話になったりはしません。そういう方向性を好きな方にオススメ。

 今回は取り上げませんでしたが、この作家の新作『ドラマな恋は基本から』も「オトナの恋愛」の話で面白いです。それこそドラマになりそうな話なのだけれど、どうだろう。

 いかにも人気が出そうな話ではあるものの、いま、Amazonのレビューを確認してみたら数が少ないですね。早いうちにチェックしておくと将来、眼力を評価されることになるかもしれません。わからないけれど。

③もんでんあきこ『エロスの種子』

 このタイトル、最近、よくコンビニで売っているところを見かけるので、目にしたことがあるという方も少なくないのではないでしょうか。「エロス」をテーマにした短編集です。

 短編マンガはなかなかビジネス的に苦しいと思うけれど、このマンガは良く売れているらしい。やっぱり正面から「エロス」を扱っているところがウケたのでしょうか。一篇一篇のクオリティも高いと思います。

 ただ、作者のほかの短編集『すべて愛のしわざ』、『ワーキンガールH。』などと違ってあくまでダークでシリアスな路線なので、その点に気をつけてお読みいただくのが良いかと思います。今回取り上げた作品のなかでも最も「えろえろ」で「どろどろ」の一作といえるでしょう。

 それにしても、ぼく、どうしてここまで一作をくわしく紹介しているんだろ。半分の文字数でも良かったのに。このままだとこの記事、10000文字をかるく超えるぞ(超えました)。

 まあ、あふれでる「愛」と「情熱」がそうさせるんですよね。読むほうも大変かもしれませんが、どうしようもないのでおつきあいくださいませ。

④金田一蓮十郎『ゆうべはお楽しみでしたね』

 「ゆうべはお楽しみでしたね」。このセリフを目にしたことがある方は少なくないのではないでしょうか。ファミコン初期の名作RPG『ドラゴンクエスト』で、救いだした姫君といっしょに宿屋い泊まるとその店の主人公が口にする言葉です。

 子供向けのゲームとはいえ、このようにいわれるとえっちな想像をせざるを得ないわけで、『ドラクエ』ファンのあいだでは有名なひと言となっています。

 このマンガはその「ゆうべはお楽しみでしたね」をタイトルに持ってきた超気弱女子(まちがい)男子とつよつよギャルの恋愛もの。

 オンラインゲーム『ドラゴンクエスト10』をきっかけにして知り合い、さらにはルームシェアしていっしょに暮らすことになってしまったふたりがしだいに惹かれ合い――というお話なのですが、途中からなぜか群像劇になったり、さらには作中作が飛びだしてきたりとかなり破天荒な展開になっていきます。面白すぎるだろ。ゲームファンにオススメ。

 ちなみに、金田一蓮十郎というわりにいかつい名前ではありますが、作者は「いわゆる女性向け」作品もたくさん描いている女性作家です。

⑤小西明日翔『来世は他人がいい』

 ヤクザものです。と、こう書くとそれだけで避けてしまいそうな人が出てきてしまうかもしれないし、じっさい、その人の感覚はおおむね正しく、バイオレンスが苦手な人には決してオススメできない作品ではあるのですが、いや、面白いんだよ!

 主人公はヤクザの組長の娘で、その関係からひとりの「危険な男」と知り合うことになり、少しずつ恋に落ちて――いっていないけれど、まあ、恋愛ものであることはたしかだと思う。

 というか、ヤクザと暴力の要素を除けばやっていることそのものはほとんどふつうの少女マンガとかハーレクイン・ロマンスと変わりがありません。めちゃくちゃロマンティックなマンガといおうと思えばいえる。でも、その暴力の要素があまりに過激なんですよね……。

 『アウトレイジ』と『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を足して炭酸で割ったような刺激的なマンガ、というか。いや、ぜんぜん違うかも。

 「危険な男」と「おもしれー女」の「規格外の純愛」がお好みの方には推薦できます。いや、ほんと、面白いんだよ。

⑥ハナツカシオリ『焼いてるふたり』

 これはね、結婚マンガですね。しかも「結婚まで」のプロセスを描くのではなく、「結婚生活」そのものに焦点をあてた内容。似たような作品はいくつかあるでしょうが、そのなかでも最も出来が良いのではないかと。

 料理や家事が得意な青年と、美人だけれどどこか抜けている女性が結婚し、しあわせな生活を送るというそれだけのお話。困ったことに、これ以上書くことがない。ほんとうのほんとうにただひたすらしあわせな暮らしが続いていくんだものなあ。

 Amazonの紹介文を見ても「「おいしい」の笑顔が広がる、極上のハッピーライフ!」と書かれているので、ねらった通りではあるのでしょう。この手の「らぶらぶ」で「ぴゅあぴゅあ」で「いちゃいちゃ」な作品をお望みの方には無条件で奨められる一作です。

 あと、ほとんど毎回のようにおいしい料理が出てくるので、料理マンガ好きの方にもオススメかも。それにしても、このとくべつドラマティックな内容がないスローライフな作風で延々と続けられるのはこれはこれですごすぎる。案外と傑作なのかもしれませんね。

⑦ふじた『ヲタクに恋は難しい』

 このマンガも、ご存知の方は少なくないでしょう。ふた組の「オタカップル」の恋が少しずつ進展してゆくさまを描いた「オタク恋愛マンガ」。

 発表当時、ふつうに美男美女で仕事もそれなりにできるオタク同士の恋愛を描く内容はきわめて斬新でした。

 その規格外の斬新さゆえに、「いや、こんな美男美女のオタクのカップルなんて非現実的だろ」といった批判も受けたようですが、いまとなってはそんなことをいう人はいないんじゃないかな。第1巻の刊行から9年、まさに時代は変わりました。

 そういうわけなので、いまとなっては「ふつうのマンガ」に思えなくもないかもしれませんが、その内容の新規性そのものはともかく、一作の恋愛マンガとしての面白さは変わりありません。

 ぼくなどは「オタクマンガ」として記憶しているものですから、なかなか「恋愛マンガ」という文脈ではタイトルが出てこなかったりしたのですが、いやいや、立派な恋愛マンガですよ? 「ぴゅあぴゅあ」な純愛を求める方にはオススメ。

 今回取り上げた作品のなかではかなり「いわゆる女性向け」の傾向が強いかもしれませんね。

⑧志茂『部長と社畜の恋はもどかしい』

 これもタイトルからわかるように社内恋愛もの。もっともタイトルロールだと思われる「部長」と「社畜」の恋愛関係はわりにあっさりと決着がついてしまい、そこから先は他の「部長」と「社員(まあだいぶ社畜ではあるけれど)」の恋が綴られます。

 そのなかには「女性部長」もいるのですが、この人が! バンバン(机を叩く音)! 可愛いんですよ! あなた、ビジネスとプライベートでそこまで印象が違うって卑怯じゃないですか、と思ってしまうくらいキュート。

 彼女と年下カレシの恋愛の先に待ち受けるものとは――まあ、だいたい予想通りではあるのだけれど、こういう作品はむしろきちんと予想通りに展開してくれたほうが良いのだ。

 個人的に中盤あたりからいっきに目が離せない作品になった印象ですね。当初の主役カップルよりも、むしろほかのカップルのほうが初々しくて食指(触手ではない!)がのびる感じ。

 10月発売予定の第11巻で堂々完結だそうです。またひとつ連続購入しているマンガがなくなってしまう……。新作を期待。

⑨山田金鉄『あせとせっけん』

 「あせとせっけん」。よくわからないタイトルですが、読んでみるとまさにこの通りのお話です。

 「汗っかき」であることが悩みの主人公と、その汗の匂いを嗅ぐことが好きな男が恋に落ちるという、ぼくが編集者だったら「ちょっと、あまりにもフェティッシュ過ぎませんかね?」といってしまいそうなカップリングなのですね。

 でも、どういうわけかこれは傑作で、その手のフェティシズムに一切興味がないぼくのような読者でも楽しんで読めます。面白いよー。

 ちなみに、この作者さんは結婚したあとの主人公たちの「こづくりえっち」をあつかった同人誌を出しています。ぼくは未読ですが、FANZAとかで買えるようなので、気になる方は読まれてみては。

 自分の作品の18禁バージョンを出す作家はいまとなっては少なくないだろうけれど、「子づくり」を描いた本は少ない気がする。

 しかも「金鉄」という硬そうな名前にもかかわらず、この作家さん、たぶん女性なんですよね。とくべつ美男美女でもスーパーエリートでもない男性と女性のラブストーリーがお好きな方に推薦します。

⑩山田金鉄『かさねと昴』

 えー、これ、じつは数日前に読んだばかりのマンガで、いま、自分のなかでいちばんホットな作品かもしれません。『あせとせっけん』の山田金鉄さんの最新作。

 先に書いたように「汗っかきの女の子と、女性の汗の匂いに興奮を感じる男」という、「いや、いくら青年マンガでもそれはアウトじゃね?」という設定を感動的なまでに「ぴゅあぴゅあ」な作品に仕立ててみせた山田さんは、今回、「女装男子とボーイッシュ女子」のカップリングに挑んでいます。

 なんかボーイズ・ラブマンガによく出ていそうな女装趣味の青年が主役なのですが、リアリティラインがわりあい現実寄りに設定されていて、「女装のむずかしさ」がフォーカスされているところが読みどころ。

 まあ、ある程度より高身長の男性が女性の格好でパスするのは現実的に考えるとむずかしいよね……。

 かれは女装はするものの性自認も性的志向もマジョリティなのでふつうに異性に恋をし、そしていろいろ悩みます。まあ、悩むのもムリはないところではある。このいくらかリアリティを残したストーリーが魅力ですね。

⑪浜田咲良『金曜日はアトリエで』

 これは、「いわゆる女性向け」の作品なのかな? それとも「いわゆる男性向け」での連載なのか。ちょっと良くわかりませんが、男性でも女性でも問題なく楽しめる作品だと思います。

 モティーフをさがして悩んでいたある天才画家とかれのモデルに選ばれた女性が少しずつ恋を発展させていくというプロット。ちなみにヌードモデル。

 「肉体関係が先んじてしまった恋愛」を描いた作品はたまにあるし、じっさいにそういうこともまああるだろうと思えるけれど、そういうわけでもないのにハダカから始まる恋愛ものは稀有なのではないでしょうか。

 美術史上、天才的な画家に選ばれたモデルがその画家の恋人だったり愛人だったりすることはままあることなので、リアリティのない設定ということはできないでしょう。独特のとぼけた味わいが魅力的なちょっと変わった作品です。

 この変わり者の男性と「天然」めいたヒロイン、ぼくはとても好きなのだけれど、苦手だという人もいるでしょうね。全4巻でコンパクトにまとまっているので、とりあえず読んでみられてはいかがでしょう。

⑫310『アラサーだけど、初恋です。』

 タイトル通り、「アラサー」のふたりの「初恋」が描かれる物語です。いや、いるんですよ、歳を取るまで一切恋愛ごとに関係なく過ごしてしまう人間は。

 その理由はいろいろではあるだろうけれど、このマンガは何しろマンガなので主人公たちはついに運命の人と巡り合います。そこから先はひたすら「じれじれ」と進むことになるわけですが、その「無自覚てれてれいちゃいちゃ」は読んでいてしあわせになれます。

 いや、良いよなあ、こういう巨大財閥の御曹司でも絶世の美女でもない「わりとふつうの男女の恋愛もの」は。

 ぼくは世界をまたにかけるような壮大なラブロマンスも好きは好きなのですが、一方で「どこにでもいそうなあたりまえの男女」の恋愛も好物なんですよねー。高校生カップルの話なので今回は挙げませんでしたが、『ディアティア』とか大好き。

 イケメンも美少女も良いのだけれど、一定以上になると「純然たるファンタジー」としての面白さになるので、「等身大のリアリティ」はなくなる気がします。それはそれで悪くはないんだけれどね。

⑬糸川一成『今日もベランダで』

 今回取り上げたなかでは、これはわりと「いわゆる男性向け」に近い作風かもしれない。とくべつえっちなシーンが多いとかいうわけでもないのだけれど、何となくそういう気がする。女性の感想を聞いてみたいものです。

 『今日もベランダで』。あるマンションのベランダを挟んで知り合った男女のラブストーリーです。

 と、こう書くとあえてタイトルに持って来るまでもない特筆するべきところのない設定にも思えるのですが、じつはこのふたり、ベランダで知り合ったあともしばらくはずっとベランダでしか会わないのですね。

 しかもおたがいの顔を知らないので、「正体」というか身の上も知らないながら、片方はかなり有名な女優さんだったりするのです。「女優にスキャンダルは禁物!」ということでなかなかふたりの恋は進展しません。しかし、少しずつ少しずつ、その距離は縮まっていきます。

 そのような「じれじれ」の進みそうで進まない関係をほのぼの見守りたい方向けの作品ですね。大傑作というほどではないけれど、かなり面白いです。

⑭雨隠ギド『おとなりに銀河』

 今回取り上げたなかでは、最もファンタジー度合いが高いかもしれません。どこか遠い星からやってきて地球に住み着いてしまった異星人一族の姫君と漫画家の青年が恋をするお話です。

 あるできごとによって「婚姻関係の契り」を結んでしまったふたりは、物理的に離れられないことになり、その契約を解除する方法を探すのですが、彼女の家族は結婚に反対で――と、なかなかに波乱万丈の話が展開します。

 ちなみにNHKのドラマの原作にもなっていて、こちらも(原作マンガとはだいぶイメージが違うながら)なかなか良かった。たぶんNHKオンデマンドで見れると思うので、マンガを読んで面白いと思われた方はそちらも見てみると良いかと思います。

 NHKのドラマ、民法のものより平均的なレベルは高いと思うのだけれど、見ている人は少ないんですよね。なぜだろう。地味だからかな。『銀二貫』とか、素晴らしくできの良い時代劇だったのですが……。

 まあそれは余談ながら、雨隠さんならではの可愛らしいロマンティック・コメディ。あたたかな雰囲気です。

⑮若木民喜『結婚するって、ほんとうですか』

 これも『焼いてるふたり』と同じく結婚テーマですね。ただし、こちらはあくまで「結婚するまで」の物語。ひと組のあまり恋愛ごとに縁も興味もなさそうなカップルが紆余曲折を経て結婚に至るまでのお話です。

 作者の若木さんは美少女ラブコメの傑作『神のみぞ知るセカイ』でヒットを飛ばした人で、ぼくはたぶん全作品を読んでいます。

 『週刊少年サンデー』で『神のみぞ知るセカイ』をみごと完結に導いたまでは良かったのですが、その後、『なのは洋菓子店のいい仕事』、『キング・オブ・アイドル』と二回連続の打ち切りを食らっています。

 で、掲載紙を『ビッグコミックスピリッツ』に移して始めた連載がこの作品。つまり、いわば乾坤一擲の勝負作であるわけで、かなり気合いが入っていると見て良いでしょう。それでちゃんとドラマ化するヒット作にしあげているんだから偉いもの。

 若木さんの最高傑作は『神のみぞ知るセカイ』で動かないとは思うけれど、こちらもコンパクトにまとまっていて良い作品。次の連載はどう来るのかも楽しみです。

⑯ましろ『山田くんとLv999の恋をする』

 これを「オトナの恋愛マンガ」といえるかというとビミョーなところですが、定義には合っているし、何より紹介したくてたまらないのでここに並べてしまおう。

 『山田くんとLv999の恋をする』。ゲームをきっかけに知り合った男女のキュートなラブコメディです。

 タイトルロールの「山田くん」はかなりのイケメンですし、わりに女性向けの作品なのかもしれませんが、主役というかヒロインの女の子がかなりいい性格をしていることもあって、男性が読んでも楽しめるはず。

 いやあ、ぼくはこういう「わりとありえるレベルのきれいなお姉さん」を主役にした作品に目がないんですよね。意外と、まったくないわけではないにしろ少ない気がするのです、そういう作品は。

 もう少し年下の少女とか、あるいはほんとにオトナの女性を主人公にした作品、さもなければ「ほんとうにどこにでもいそうなふつうの」女性を主役にしたものはたくさんあるんですけれどね。

 完全に女性向けなので今回はラインナップに加えなかった作品の名前を唐突に出すと、御徒町鳩さんの『男友達が檄甘カレシになりました』とかも大好きです。これもいいマンガなんだ、ほんとに。

⑰秋★枝『恋は光』

 「恋愛マスター(笑)」こと秋★枝さんの恋愛マンガで 他人の恋ごころが光になって見える男の話です。

 ぼくはこの秋★枝さんのマンガが好きでねえ、ぜんぶ読んでいるんじゃないだろうか。同人誌も出しているそうなので、そこまでは追いかけられていないけれど。ていうか、いま確認してみたら駿河屋でたくさん売っているな。買ってみようかな。『けもフレ』本とか出しているみたい。

 ところでこのマンガ、全7巻できれいに終わっているのですが、おそらく結末まで読むとカップリングが納得いかないというか、最後の展開それはないだろ!と思う方がたくさんいらっしゃると思います。

 何をかくそうぼくもそのひとりなのですが、そういう方は映画版を見てみると良いことでしょう。これはネタバレしても良いところだと思うのでいってしまいますが、最後のほうの展開が原作と違っているのですね。

恋は光

恋は光

  • 神尾楓珠

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 ふつうはこういうことをすると賛否両論になるところだけれど、この映画に関しては「よくやった!」という声のほうが多いと思う。そういう作品です。

⑱ma2『私たちが恋する理由』

 ある会社を舞台に、同時進行する複数のカップルを追いかけた作品です。そういう意味では『部長と社畜の恋はもどかしい』に近いジャンルかも。ぼくはこういうの好きなんだな。

 これも、たぶん女性向けに近いのかもしれないですね。出てくる男がひとくせありながらもいちいちかっこ良すぎる(笑)。男性が読むと女性から見た男性のかっこ良く感じるところがどこなのか良くわかって良いんじゃないかな。

 べつだん、超絶イケメンとかじゃなくても、かっこ良い人はかっこ良いんですよ。なかなかぼくのようなモテない男性にはマネのできないところではあるわけですが、せめて、そのかっこ良さの由縁くらいは理解しておきたいところ。

 さいしょの主人公が背が高いことにコンプレックスを持っている女性で、そこがひるのつき子『133㎝の景色』にちょっと通じている気もします。

 いま(9月8日現在)、第一巻が無料で読めるようなので、ぜひ読んでみてほしいですね。わりに地味かもしれませんが、なかなかきゅんきゅんする面白いマンガです。

⑲板倉梓『瓜を破る』

 「瓜を破る」、このタイトルでわかる人はわかるかもしれません。つまり、「破瓜」をテーマにした作品です。「処女喪失」ってことですね。

 この「喪失」という観念そのものがいかにもおっさんくさいというか、いちどえっちしたくらいで何を喪ったことにもならないという気もするのですが、それはともかく、これは歳を重ねたのにいまだ恋愛経験が薄く、処女のままの主人公の物語。

 彼女は「瓜を破る」ことを願ってさまざまな行動に出るのですが、それは裏目に出ることが多く、なかなか実りがもたらされません。

 もちろん、若くてかわいい女性なので、ただ単にセックスしたいだけなら方法はあることでしょうが、あくまで「それなりに好きな人と」したいわけだからむずかしいですよね。

 加速度的に恋愛相手を探すことがむずかしくなり、性に対する関心も変わってきて、非常に処女とか童貞が増えている現代社会ならではのテーマといえるかもしれません。ふつうに恋愛ものとして読ませるので、かなりオススメの一作だったりします。いろいろな意味で痛いけど。

⑳夜宵草『ReLIFE』

 最後の最後に反則の作品を持ってきてしまった。『ReKIFE』。じつはこの作品は高校を舞台に高校生を主役にしたマンガです。

 それならどうして「オトナの恋愛マンガ」といえるのかというと、主人公はじつはアラサーの青年なのですね。しかし、薬物によって10歳若返ってふたたび青春を過ごすことになるのです。

 無茶といえば無茶なお話ではあるものの、これが面白いんだよ! しかもじつは――と、ここから先はネタバレになってしまうのでやめておきますが、ささいなことから「二度目の青春」を過ごすことになったため、同級生たちより少しだけ大人な主人公を巡るアオハル的日常がたまりません。

 「オトナの恋愛もの」でありながら、同時に「爽やかな青春もの」でもあるという、なかなか見ないタイプのマンガなんですね。しかも、その「若返り」は一年という期限付きで、その期間が過ぎたら関わった人間全員の記憶は失われてしまうという切ない設定もある。

 花丸オススメのフルカラーマンガです。これは良いよー。アニメも良かった!

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