「スタンド」、それは「大いなる力」なのか? それとも「秘められた知恵」を意味するのか? いま、ここに「第九の冒険」が幕をひらく。
- 【『ザ・ジョジョランズ(The JOJOLands)』始動ッ!】
- 【その名は「ジョディオ」!】
- 【「保守化」の兆し、なし!】
- 【『ジョジョ』における「主人公像」の変遷。】
- 【「悪」のダークヒーロー誕生か?】
- 【先行きはどうなる?】
- 【お願い】
- 【電子書籍などの情報】
- 【おまけ】
【『ザ・ジョジョランズ(The JOJOLands)』始動ッ!】
先日、日本が誇る天才作家・荒木飛呂彦のライフワーク『ジョジョの奇妙な冒険』の第九部『ザ・ジョジョランズ(The JOJOLands)』の第一巻が発売された。
物語は冒頭からロケットスタート。いきなり面白い! この記事では初老に達した荒木がさらに新境地を切り開くこの冒険的な新作のことについて簡単に語っていきたい。ちなみに『ウルトラジャンプ』の公式サイトで「第一話」を無料で読めるので、「こんな記事を読むよりまず本編を読みたいッ!」と思われる向きはそちらへ飛んでほしい。ぶっ飛ぶよ。
【その名は「ジョディオ」!】
さて、『ジョジョ』シリーズはいままで八人の主人公の八つの「冒険」を綴ってきたわけだが、今回の「第九部」はまったくあらたな物語となる。
以前から作者の荒木は「第九部までは構想がある」ことを語っていた。その意味では、ひょっとしたら『ジョジョ』はこの作品が「最後」になる可能性もなくはない。いろいろな意味で「注目」の新シリーズだ。
そして、荒木はこの九番目の物語にあたかも最強の「スタンド」のひとつ「パイツァ・ダスト」のような「爆弾」を仕掛けてくる。
第九部の主人公、その名は「ジョディオ・ジョースター」なのだ。
『ジョジョ』の熱心な読者でなくても、このシリーズのことを少しでも知っている者ならこの名前に驚くことだろう。
略して「ジョジョ」となる名前であることはいつも通りだが、なんと主人公の一族ジョースター家の最大の宿敵であるはずの「ディオ」の文字がそこに含まれているのだ。
これはかれが主人公でありながら「悪の素質」を秘めていることを表わしているのだろうか……? そうだとしたら、かれはどのようにして「ヒーローの資格」を満たしていくのだろう?
冒頭からすでにわくわく、ぞくぞく、先の展開を読ませない内容だ。
【「保守化」の兆し、なし!】
『ジョジョ』は累計130巻を超えるほど続いている日本有数の超長編シリーズであるわけだが、この期に及んでもなお「驚き」がある。どこまでも「新たな境地」をめざしていてまったく保守化していないことを感じる。
ひと言、素晴らしい。どんな素晴らしい才能を持った作家でも、歳を取ると「守り」に入り、いままでの自作を自己模倣する傾向が見られるようになるものだが、この真の天才作家はそうではないようだ。
「挑戦」こそ、かれの本領なのだろうか?
【『ジョジョ』における「主人公像」の変遷。】
そもそも、『ジョジョ』の主人公像は、第一部における「いかにも正当派主人公」のジョナサン以降、しだいに「ひねり」を加えて来るようになっていた。
第三部の空条承太郎はときに犯罪行為をも何とも思わない不良だし、第五部のジョルノ・ジョバァーナは「悪のカリスマ」ディオの血を引いている。第八部に至っては「自分が何者なのかすらわからない」記憶喪失の少年だ。
あくまで「正統派少年漫画」として、「だれもがあこがれるヒーロー」を描く『ジョジョ』には、しかしシリーズが続くにしたがって、危険なほど「善」と「悪」が接近していくという特徴もあるのである。
それは決して「善も悪も同じひとつのものでしかない」といった相対主義を採用したわけではなく、むしろ、シリーズを通して「善とは何か? 悪とは何か?」を突きつめて考えるための「チャレンジ」であるのだろう。
主人公はあくまで「ヒーロー」! だが、かれはより過酷な前提でその「資格」を証明しなければならなくなっていくのだ。
【「悪」のダークヒーロー誕生か?】
とはいえ、いままでの各部の主人公たちは、どれほど「悪」に接近しているとしても、それでも光り輝く「黄金の精神」の持ち主たちだった。
だから軽犯罪などは何とも思わないような順法意識の低い人物であっても、「ヒーロー」として受け入れられたのである。
しかし、このジョディオは、たとえ「漆黒の意思」は持っているとしても、いまのところ「黄金の精神」の発露は見せていない。その行動はむしろ「悪」そのものですらあるように見える。
いったいこの少年がどうやって「真のヒーロー」へと目覚めていくのか? それとも「邪なダークヒーロー」に終わるのか?
かれが「この世の仕組み(メカニズム)」の頂点に立つ「大富豪」をめざすという今後の展開には注目せざるを得ない。
そして、これはネタバレになるからあえて書きはしないが、この物語には「驚くべき人物」も登場してくる。第一巻からすでに「サプライズ大盛り」なのだ。
この新鮮さ。これがほんとうに延々と続いてきた物語だろうか? まるで、「まったく新しい作家」の誕生を目にしているかのようだ。そこには「守り」に入って「成功を確保」しようとする意図など微塵も感じ取れない。あくまで最後まで「挑戦」を続けるクールな精神があるだけだ。
【先行きはどうなる?】
そういうわけで、始まりからしていきなりすさまじい展開になっている『ザ・ジョジョランズ』なのだが、先行きが心配でないこともない。
そもそも、ここに至ってなお少しも面白さが錆びついていない『ジョジョ』ではあるのだが、それでもシリーズが進むごとにしだいにストーリーが難解になってきたことは否めない。
初めはわりと単純な「力と力のぶつかり合い」だった物語は「知恵比べ」を経て少しずつ抽象性を増し、いまでは作中の「スタンド」という概念は「超能力の具現化」といった次元を超えて、「この世にあるパワーの象徴」といったものと化している。
したがって、いわばそこで描かれているものは、単なる「能力バトル」というよりは「抽象概念と抽象概念がぶつかりあう」ストーリーとなっているわけで、もはや少年漫画とかエンターテインメントというよりは、前衛的なアートといった趣きすらある。
それだけに、面白くはあっても「わかりにくい」という欠点が前作『ジョジョリオン』にはあきらかにあった。
だが、仕切り直した『ザ・ジョジョランズ』はいまのところ、かなり「わかりやすい」。複雑ではあるが整理されている印象だ。
このまま、ストレートに進んでくれると助かるのだが、どうだろう?
いずれにしろ、荒木飛呂彦の「パワー」はここに来て衰えるどころかさらに増しているようだ。このまま、最後まで走り切ってほしい。いちファンとして、願うことはただひたすらに、それだけである。
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