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オタク文化は「聖なるもの」を表現できるか? マンガ、アニメ、ゲームに宿る宗教性を解読する本を上梓しました。

 電子書籍『ヲタスピ』上下巻が発売されました。

 賛否両論の大反響を呼んだ以下の記事で「第一章」を公開した本です。

 「オタク文化」と「宗教的なもの」という、一見、何の関係もなさそうで、じっさい特に関係していないかもしれないふたつの文脈に「共通する何か」を見いだそうとする二冊となっています。

 上記記事に載せた「第一章」もかなりの長さでしたが、じつはそれは上下巻18万文字の八分の一であるに過ぎず、そのあとには第二章から第八章までが続いているのでした。

 な、長い。われながらよく書いたものです。

 この本、諸事情により書き上げてから半年以上寝かせていたのだけれど、ようやく皆さんのもとにお届けすることができました。

 「第一章」を読んで少しでも面白いと思った人なら続きも楽しく読めると思うので、良ければ買って読んでください。Kindle Unlimitedなら無料で読むこともできます。

 参考として目次を載せておきましょう。

序章

第一章「オタク・スピリチュアリティとは何か?」

①「オタク文化と宗教のアフィニティ」
②「アイロニカルに没入する」
③「オタク・スピリチュアリティ」
④「ありとあらゆる善きものの象徴にして集合」
⑤「世界の秘密と始原の暗号」
⑥「推しを通して聖なるものを垣間見る」

第二章「非合理性の誘惑」

①「スピリチュアル文化の歴史と現状」
②「オタク文化のなかのスピリチュアルな表象」
③「人はなぜ非合理的なものを求めるのか」
④「人類は宗教を離脱するのか」
⑤「この世に不思議は残されているのか」
⑥「聖なるもののデカダンス」

第三章「異教を信じる人々」

①「世界境界とオタクの絶対倫理」
②「復活を遂げるペイガニズム」
③「くらやみから飛び出た魔女たち」
④「妖精郷グラストンベリーの女神信仰」
⑤「サイコマジックという実践」
⑥「霊性の物語としてのスピリチュアル文化」

第四章「聖なるナラティヴ」

①「戦場化した新自由主義社会のアミュレット」
②「信仰としての推し活」
③「魔術としてのポップカルチャー」
④「少女たちの輪廻転生」
⑤「夢幻の版図」
⑥「いったい何のために生まれてきたのか?」

【下巻予告】

第五章「物語は「神なるもの」をどう描いて来たか」

1「SF小説に見る宗教性と反宗教性」
2「科学合理性の魅惑と限界」
3「後期クイーン問題と神」
4「酸鼻と陰惨のゴシック・ホラー」
5「ナルニアへ続く箪笥」

第六章「性と聖」

1「推し活は「性的消費」なのか」
2「エロティシズムと聖なるもの」
3「泣けるゲームやアニメの神聖な構造」
4「愛という言葉すら忘れ去られて」
5「詩人が見た夢」
6「性と聖を統合し昇華する」

第七章「推し文化のスピリチュアルなかたち」

1「ふたつの殺人事件」
2「共食いの匣」
3「悪の華、咲きそめる」
4「尊くもグロテスク」
5「その都市の名はオメラス」
6「実存的空虚の解」

第八章「朝」

1「供犠の処女」
2「新人類は遠く」
3「この心臓をきみに」
4「わたしたちの完璧な世界」
5「神の指さきに触れるとき」
6「朝」

あとがき

 たぶん、これだけ読んでも何が書かれているのかさっぱりわからないと思うけれど、読めばわかるはずなので、ぜひ、ご一読いただければと。

 自分ではわりと面白いと思っています。全力の九割くらいを出して書いた本です。ちなみに十割を出すと廃人になってしばらく立ち直れないので、ほぼほぼ限界まで力を出し尽くしたといって良いと思います。このブログはだいたい七割くらいの力で書いている感じなんですけれどね。

 それはともかく、なぜこんな本を書こうと思ったかというと、既存のサブカルチャー批評に飽き足らないものを感じていたからなんですね。

 ぼくがたとえば瀬戸口廉也の作品に感じた、圧倒的な感動を表わす「ことば」がそこには欠けているとずっと感じていました。

 それは何か「聖なるもの」との出逢いといいたいような宗教的な感動なのであり、「たかがアニメ」や「たかがライトノベル」などという言葉で表現される「猥雑なサブカルチャー」のイメージを遥かに超えるものであると思っていました。

 たとえば、以下の記事で書いたような作品に対する崇高な感動は「宗教的」という表現をしたくなってしまうのです。

 で、いろいろ本を調べてみると、宗教学のほうでもオタク文化と宗教の関連性について書かれた本があることがわかってきました。

 たとえば今井信治『オタク文化と宗教の臨界』。この本、どうにもプアなぼくにはなかなか手が出ないお値段で、しかもなにせ少部数の専門書なので、図書館にリクエストしても入れてくれず、どうしたものだろうなあと思っていたのですが、がんばって買いました。

 その他、『ポップ・スピリチュアリティ』とか『サイファ覚醒せよ!』みたいな本を読んで参考にしながら書き進めていきました。

 ちなみに、主要参考文献および参考作品は以下のようになります。うん、これだけ手間をかけてせいぜい五部とか十部くらいしか売れない本を書くんだから、ぼく、偉いよね。

 ていうか、買ってください。あるいは買わなくて良いからKindle Unlimitedで読んでください。このままだとほんとに五冊とかしか売れないだろうからね……。

【参考文献】

 

『不可能性の時代』
『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』
『サイファ覚醒せよ!』
『きわきわ 「痛み」をめぐる物語』
『気流の鳴る音』
『パンセ』
『宗教と日本人』
『ケルトの水脈』
『ケルト復興』
『ヨーロッパ異教史』
『グラストンベリーの女神たち』
『母権制』
『魔女の世界史』
『鏡リュウジの魔女入門』
『聖魔女術 スパイラル・ダンス 大いなる女神宗教の復活』
『サイコマジック』
『時間とテクノロジー』
『中二病取扱説明書』
『神は妄想である』
『神は妄想か?』
『正統とは何か』
『霊と金 スピリチュアル・ビジネスの構造』
『前田敦子はキリストを超えた』
『オタク文化と宗教の臨界 情報・消費・場所をめぐる宗教社会学的研究』
『ポップカルチャーマジック』
『ポップ・スピリチュアリティ』
『宗教なき時代を生きるために』
『デカルトからベイトソンへ』
『アイドルについて葛藤しながら考えてみた』
『エロティシズム』
『ツァラトゥストラ』
『童貞としての宮沢賢治』
『アルティメット・エクスタシー』
『性と芸術』
『「スピリチュアル」はなぜ流行るのか』
『あなたを陰謀論者にする言葉』
『宗教と性』
『ゴシックハート』
『ゴシックスピリット』
『見えない世界の物語 超越性とファンタジー』
『天使の王国』
『魔法少女はなぜ変身するのか』
『オウムからの帰還』
『共時性の深層』
『聖と俗』
『「推し」の科学』
『サピエンス全史』
『実存的貧困とはなにか』
『利他とは何か』
『贈与論』
『精神世界のゆくえ』
『世界が変わる現代物理学』
『奇蹟を求めて』
『動物化するポストモダン』
『聖母エヴァンゲリオン』
『無痛文明論』
『私はどこから来て、どこへ行くのか』
『現代宗教とスピリチュアリティ』

 

【参考作品】

 

『新世紀エヴァンゲリオン』
『その着せ替え人形は恋をする』
『魔法少女まどか☆マギカ』
『ハリー・ポッター』
『ホドロフスキーのDUNE』
『ナルニア国ものがたり』
『スター・ウォーズ』
『英霊の聲』
『Kanon』
『AIR』
『CLANNAD』
『Angel Beats!』
『SWAN SONG』
『輪るピングドラム』
『銀河鉄道の夜』
『プラネテス』
『愛人[AI-REN]』
『くつしたをかくせ!』
『楽園の泉』
『海底牧場』
『幼年期の終り』
『神狩り』
『百億の昼と千億の夜』
『アイの物語』
『サーラの冒険』
『ソラリス』
『天の声』
『九尾の猫』
『十日間の不思議』
『ふたたび赤い悪夢』
『夏と冬の奏鳴曲』
『Fate/Zero』
『魔法少女まどか☆マギカ』
『タコピーの原罪』
『チェンソーマン』
『リコリス・リコイル』
『Gunslinger girl』
『天気の子』
『カラマーゾフの兄弟』
『風の十二方位』
『PSYCHO-PASS』
『ジョーカー』
『僕の地球を守って』
『伊集院大介の新冒険』
『ライト・ノベル』
『ハチミツとクローバー』
『攻殻機動隊』
『春と修羅』
『金子みすゞ詩集』
『ママの推しは教祖様』
『2001年宇宙の旅』

 まあ、そういうわけで、しばしばオタク文化に感じる「聖なる感動」をどうにか言葉にしようという、これは冒険であるわけです。

 ただ、このような論理展開にはおそらく反発もあるでしょう。ぼくたちの大好きなカルチャーを宗教みたいな怪しいものと絡めて語るなんて何ごとだ、みたいな?

 それもまあ理解できる見解なのだけれど、でも、ぼくはべつにオタクと宗教に直接の関係があるとは考えていません。

 そうではなく、むしろ「宗教を生み出した人の心理」がオタク文化の根底にあるのではないかと思っているわけです。

 何かかぎりなく素晴らしいもの、美しいもの、それでいて混沌として猥雑なもの、そういうものを生み出す心が、一方では宗教文化を生み、他方ではアニメやゲームとなってオタクを楽しませたりしているんじゃないか、と。

 ムリがある発想ですかね? きっとそう思う人もいると思うのですが、ぼくとしては最高の作品と出逢ったときのあのからだが痺れるような、涙が止まらなくなるような感覚を信じたい。

 それはきっと「神の指さきに触れた」感触なのだと思っているのです。

 うそ、大袈裟、紛らわしい、でしょうか? まあそうなのかもしれませんが、ぼくは自分の感覚を信じるのみです。

 そういうわけでようやく世に出すことができたこの二冊、くりかえしますがぜひぜひお買い求めの上、ご一読くださると幸いです。

 一冊ワンコイン! 安いでしょ。よろしくお願いします。

 でわでわ。

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