アニメ『推しの子』は「気持ち悪い」ところが「面白い」。

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 赤坂アカ&横槍めんごのマンガ『推しの子』が面白いです。

 ぼくは常時、雑誌で最新話を追っているのですが、あいかわらずの予想を超える展開に目が離せません。

 いったいこの物語はどこに行くのでしょうか? アクアの復讐は果たされるのか? ルビーの夢は叶うのか?

 たぶんハッピーエンドだろうと見ているのだけれど、いまの段階ではまだ何ともいえませんね。

 最終回でアクアが刺されて終わってもおかしくないような作品だけに、ドキドキハラハラが続いています。

 それにしても、ぼくはこのマンガ、連載開始時点からずっと追いかけているのだけれど、どうもうまくその面白さを言語化できない。

 いったいなぜここまで面白く、また人気が出たのか、精緻に言語化できない気がするのですね。

 たしかにアイドル、転生、復讐、ミステリ、サスペンス、恋愛といろいろな要素が巧みに合わさった作品ではあるのだけれど、逆にいえばひとつひとつの要素は既視感があるものだということでもある。「新味がない」という評価を受けてもおかしくなかったはず。

 それなのに、じっさい作品を見てみると圧倒的に新しいんですよね。これはいったい何なんだろうと思ってしまいます。

 ひとつ思うのは、人間一般や芸能界のダークサイドをわりに赤裸々に描き込んでいるにもかかわらず、アイドルという存在の「キラキラ感」がまったく色褪せていない。

 「芸能界のダーティーな裏側」をにおわせていながら「表側」の魅力が消えていないんですね。

 いわば「表」と「裏」、「真実」と「ウソ」、「美しいきれいごと」と「気持ち悪い現実」が相殺し合うことなく両立している。

 そこが何とも不思議な作品だなあ、と感じます。

 これ、ほんとはもっとダークでマイナーな設定の作品だと思うんですよね。

 何しろ、推しのアイドルの子供に生まれ変わるところから始まるという、あたおかにも程があるだろというウルトラスーパーロケットスタート。

 そこからさらに二転三転するストーリーは、どんどんグロテスクともいえる展開に到達していきます。

 「気持ち悪い」という言葉はかの『The End of Evangelion』以来、オタク界隈ではある種の特別な意味合いをもって使われるようになった気がしますが、『推しの子』は見ようによってはほんとうに気持ち悪い話で、しかし、そこが最大の魅力でもあるのだと感じる。

 こういう作品はたしかに類例がないかもしれない。

 どういえば良いのだろう、「芸能界の闇を暴く」みたいなストーリーはもちろんいままでもたくさんあった。

 一方で、徹底して「きれいごと」を貫き通したアニメ版『アイドルマスター』(名作!)みたいな例も当然、いくつもある。

 しかし、きれいごとの作品はきれいごとでしかないし、また、「裏側を暴き立てる」物語は今度は「裏側こそが真実だ」という描写になってしまう。

 でも、『推しの子』においては「裏」も「表」もどちらも真実である、という描写になっていると思うんですよ。

 もちろん、アイやアクア、ルビーを初めとするアイドルたちの虚像は作り込まれた「ウソ」でしかない。

 特にアイはじっさいには十六歳にして妊娠、出産するような女の子で、キラキラした表面はあくまで作り込まれてもの。

 しかし、それでいて、かれらの演技はファンとのあいだのきわめて高度で真剣なコミュニケーションでもあるんですよね。

 まったくの「ウソ」が同時に紛れもない「真実」でもありえる、それが「アイドル」なのだという演出になっていると思います。

 うん、これはたしかに新しい。何だろ、アイドルのきれいな表面だけではもう説得力を持たない時代であることはまちがいなくて、「どうせ裏側があるんでしょ?」ということは、もうどんなに熱烈なファンでも感じ取っている。

 しかし、アイドルを「推す」ということは、そこに真実があってほしいという祈りでもある。

 自分の見ているものが虚像に過ぎないかもしれないとはうすうす感じ取っていながら、でも、そこに強烈なリアリティを感じ取る。

 それが「推す」ということの本質であって、『推しの子』はそこのバランスを絶妙に感じ取っているから迫真の面白さに到達しているんじゃないか。何冊かのアイドル本を読んだりしてぼくはそう思いました。

 「きれいはきたない、きたないはきれい」。シェイクスピアの『マクベス』を思い出すところです。

 いや、まあ、あるいはこれはぼくの買い被りであるに過ぎず、多くのファンはただひたすらベタにアイドルのファンタジーを消費しているに過ぎないのかもしれませんが……。

 でも、「オタクである」ということはその「ウソをウソと承知で心から信じる」ということに本質があると思うんだよね。

 すべてただのウソであり作り物であるとクレバーに承知していながら、そこに何がしかの真実を見て取る。

 それがこの「虚構の時代」を楽しみつくすには必須のスキルで、アクアやルビー、重曹ちゃんたちは虚構のうさんくささ、現実の生々しさをすり抜けるようにしていわば二重に生きている。

 あの「キラキラした感じ」はそこから来るものなのだと思います。

 『推しの子』は気持ち悪いという人もいるけれど、そのダーティーさはもちろん意識的に組まれたもので、だからこそ面白い。

 これからの『推しの子』にも注目です。もっと気持ち悪く、グロテスクに歪みながら美しいものを見せてほしい。そう願っているところ。

配信サイト一覧

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  • KADOKAWA アニメーション

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 なお、更新日以降、情報は変更されることがありえます。完全に正確なところはご自身で判断をお願いします。

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配信あり
   
31日間無料
月額2,189円
      
Disny+
    
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無料期間なし
月額990円 
      
Prime Video
    
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31日間無料
月額500円 
    
Netflix
    
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月額990円
      
Hulu
    
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月額1,026円
      
AppleTV+
    
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7日間無料
月額600円
      
dアニメストア
    
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30日間無料
月額550円
      
DMMTV
    
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30日間無料
月額550円
      

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