「エロス」の本質は「倒錯」にあり。
カルトなマゾヒズムエロマンガ
このブログでは諸々の規約により18禁の本は紹介できないのですが、ぼくの好きなエロ漫画家さんにディビさんという方がいます。『その指先でころがして』という単行本も出しているのですが、いや、これがもう、ものすごいカルトな作品なのですよ。
一般的なエロ漫画というと、「可愛い女の子がひどい目にあう」的なものが想像されるところですが、かれが描くのはいつだって「サディズム」ではなく「マゾヒズム」の世界。
きれいな女の人に可愛い男の子がめちゃくちゃに犯されるという、そういう漫画ばかり描いているのです。ぼくはこれが好きでねー。だいたい、「倒錯」とか「頽廃」という言葉が好きでならない人間なので、この手の漫画には非常に惹かれるのです。
そもそもこの世には「ジェンダー」と呼ばれる「見えない鎖」があって、人を支配しています。もちろん、多くの人は自分がそんなものに束縛されているなんて気づいていませんが、でも、それは確実にあるようにも思えます。
ジェンダーとは、「男は男らしく、女は女らしくあらなければならない」という「規範」のこと。まあ、ひとことでいって余計なお世話というものなのですが、とにかくそういう規範はある。
しかし、ディビさんのマゾエロ漫画はそういう規範を根底から覆します。これが、何ともいえずエロティック。まさに変態と倒錯の世界ですが、いいじゃんね、変態でも。というか、変態だからこそいいのです。
人間はひと皮剥けばみんな変態だというところがあります。「正常」だの「異常」なんていう考え方こそが幻想に過ぎないのです。
この漫画、「女性をモノ扱いしているから」といって反ポルノを標榜する一部のフェミニストに見せてやったらどういうふうな反応をするだろうと思うのですが、それはさておき。
ひとには「受け身になりたい」、「対象化されたい」という欲望もまたあるものだということです。これは男女を問わずそうなのです。
しかし、世の中にはジェンダーによる思い込みがあるから、「男は受け身であってはならない。攻撃的でなければならない」というふうに思い込む。ところが、ディビさんの漫画はそういう思い込みを破壊してしまう。そこがなんともいやらしい。淫ら。いいですね。
ぼくは思うのですが、ひとに「正しい欲望」だの「間違えた欲望」なんてものは存在しません。どのような邪悪な、あるいは狂った欲望であれ、それ自体に善も悪もないのです。
だから、「正しい欲望」を抱くようにせよ、というのは土台から無理な話なのだと思う。ひとが理性より感情の生きものである以上、どうしたってそんなことはできないのです。
ただ、「豊かな欲望」というものは存在するでしょう。それはつまり、いかに変態を究めているかということです。変態であればあるほど、倒錯していればいるほど、この世の常識的なことわりから外れていればいるほど、そこに人間らしい面白さがあるとぼくは思う。
そう、セクシュアルな欲望もまた人間の人間らしさの一面なのであり、決して忌避するべきものではないのです。
もちろん、より「一般的な」性があたりまえで退屈なものであるというわけではない。そうではなく、それもまたひとつの変態なのだということを自覚するべきだということです。
「正常な欲望」などこの世にはなく、また、「正常なセックス」なんてものもない。正常だと思い込んでいるのは、それは社会によってそう思い込まされているに過ぎないのです。
しかし、「男は男らしく、女は女らしく」なんて、実にくだらないことです。そういった「奴隷の鎖」から自分自身を解放するために、ディビさんが描くような変態漫画は大変役に立つでしょう。
いやまあ、解放されたあとにどんな世界がひろがっているかはわからないところですが――。
倒錯と頽廃と変態。やっぱりそうでなくっちゃね!とぼくは思います。いいよね、変態。
『女の子が抱いちゃダメですか?』と『あなたが甘くねだるまで』。
ちなみに、ねじがなめた『女の子が抱いちゃダメですか?』というマンガもあります。
まあ、タイトルにある通り、清楚で可憐な一輪の白百合のような美女が、なぜかつき合っている彼氏の萌え仕草に違和感とむずがゆさを感じてしまうというところから始まり、彼女がじつは自分は「攻めたい」タイプだったことを自覚し、彼氏との性的関係を変えていくという物語です。
このあらすじだとただのエロ漫画のようですが、じっさいに読むとあくまでひとつのエッチな恋愛作品であり、何というか相当に「てえてえ」作品となっております。
いやあ、BLとか百合も良いだろうけれど、女性上位の異性愛カップルも良いよね! そもそも国萌庁の調査によれば、いまどきの男子の七割は「どえむ」なので、べつに女の子が攻めても何の問題もないのです!
ただ、あくまで主人公は「生まれついてのどえす」とかそういう性癖のもち主というわけではない、ただ自分が攻めるほうが好きなだけのふつうの女の子なので、あまり極端なエロ描写は受けつけないという方も安心して読める作品となっています。
もっとも、この主人公の女の子、物語が始まるまで自分が攻め好きであることを自覚していなかったという設定なのだけれど、そこはリアリティないですよね(笑)。
じっさいにもこういう女性は一定割合でいるとは思うのだけれど、おそらくそういう人はその前の時点で自分の性癖に気づくはず。だってねえ、それはそうでしょう。
じっさいに何度もセックスしておいてなお、自分のセクシュアリティをまったく自覚しないなどということがあるものでしょうか。
いや、でも、同性愛者でありながら自分の同性愛志向をまったく自覚せずに異性とつきあったりする人も相当数いるようだから、ありえないというわけではないのかなあ。よくわからない。
ちなみにPivivの「ピクシヴ百科事典」にはちゃんと「女攻め」の項目がありまして、それなりに女性の攻めも需要があることが想像できます。
いやまあ、Pixivなんて変態オタクのすくつだから(偏見)、一般ぴーぽーの嗜好とはまったく違っているかもしれないですけれどね。でも、ぼくの直感では、男性にも女性にも女性攻め作品が好きな人は一定割合でいると思う。
まあ、べつだん、男女の性的役割がどうこうと退屈な理屈を捏ねなくても、こういう作品が増えて日本のエロティシズムが多様化していくことは望ましいですよね。少女漫画によく出て来る「どえす男子」とか、ひいひい言わせたい気はする。
でも、そういう種類の願望を持っている女性はだいたい腐女子になるのかなあ。ほんとよくわからん。
ちなみに、よりセクシュアルな女性攻め漫画としては、やはりディビさんの『あなたが甘くねだるまで』という作品もあります。
もちろんいままでも男性受けの漫画はたくさんあったでしょうが、ディビさんのそれは何というか次元が違うんですよ。
この漫画そのものは十八禁ではないので、こうしてブログに貼っても問題ない、はず。表紙の時点でかぎりなくやばいオーラが出ていることはいかんともしがたいし、中身はもっとやばいのですが、あくまで十八禁ではない健全な作品ですから! セーフ、セーフ。
そういえば「生命学」の学究を自称する森岡正博さんが『感じない男』という本を書いています。
その本のなかでかれは射精というむなしい快楽もどきしか知らない男性の性の不毛さについてきわめてマジメに力説しているのですが、そんなもの、どこかのフーゾクでも行ってプロの女の子に思い切り攻めてもらえばそれで解決する問題なのでは思わないこともないのですよね。 
森岡さんの考え方は男が攻めて女が受ける「ふつうの」セックスだけで完結していて、それ以外の形には全然想像が至っていないらしいのです。いやー、いまどき、そんなもの、いくらでも「ほかのスタイル」はありえるでしょ、とぼくは思うのですが。
女の子が抱いてもいいの? そんなもの、良いに決まっています。いやでも、ふつうの人たちはそんなこと思わないのかな。上記の漫画の作中でも「ふつう」の呪縛は意外に大きいことが示されています。
しかしなあ、どうせ寝室にはふたりしかいないのだから、どこまでアブノーマルを追求したっていいと思うのだけれど。性の形に正常も異常もないのさ。いや、ぼくは清く貧しい非モテのオタクだからよく知らないけれどね!
まあ、ディビさんのほうは漫画はおそらくもう行くところまで行ってしまうのだろうけれど、『女の子が抱いちゃダメですか?』はそこまでは行きそうにないので、もう好きにしろ!としかいいようがないとぼくは思います。
みんなちがって、みんなエロい。それでいいじゃん、と思うのですが、どうでしょう。
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