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現在、Amazonにて大規模セール中! 『ヤングジャンプ』連載の傑作マンガベスト10を語り倒す。

まえせつ

 いま、Amazonで集英社の『ヤングジャンプ』連載作品を中心とした電子書籍に41%とか51%のポイント還元が付いていますね。大人気の『推しの子』などが実質半額で買えるわけで、かなりお得なセールだと思います。

 その他、はなはだしきは【期間限定無料】の作品なども混じっています。そこで、個人的に好きなヤンジャンマンガ(など)をベスト10の形式で並べてみました。ご参考になさっていただければ幸い。

番外『おいしい関係』

 と、いきなり『ヤンジャン』連載作品ではない少女マンガから入ってしまうわけなのですが、調べてみたところ第一巻のみポイント還元をしていたので(なぜ)、番外として取り上げます。

 いやあ、このマンガ、大好きなんですよ。いまとなっては知る人ぞ知る作品かもしれないけれど、作家・槙村さとるの全盛期の最高傑作のひとつだと思う。オススメ。

 いわゆる「料理マンガ」なのですが、『美味しんぼ』のように料理対決に向かうわけではなく、『ラーメン発見伝』のように批評的な分析を始めるわけでもなく、料理を巡る人の心を追いかけていきます。

 父の死をきっかけに料理の世界に飛び込むこととなったひとりの女の子の成長を描く、一種の「お仕事マンガ」でもあるものの、本質はむしろ「親に捨てられた」、「親を捨ててしまった」という過去のトラウマを乗り越えていこうとする男女の葛藤の描写にこそある。

 少女マンガがまだ面白かった頃の名作ですね。「愛する」とはどういうことなのか、その秘密の一端がここにある、といって良いかと考えます。

10位『べしゃり暮らし』

 そういうわけで、第10位は『べしゃり暮らし』です。

 いまのところ、第1巻と第2巻が「期間限定無料」、そして第3巻が41%還元となっております。それ以外の巻はポイント還元がつかないようなので、ご注意ください。

 さて、『少年ジャンプ』であっさり打ち切られてしまったマンガとして記憶している方も多いであろう『べしゃり暮らし』ですが、じつはその後も雑誌を移って連載が続いていて、しかもその後のほうが面白いというのは知る人ぞ知る(というほどでもないけれど)事実。

 かなりの長期連載となっていろいろいろ事件が起こっているので、『少年ジャンプ』時代だけを見て「寒いなー」「つまらないなー」と見放してしまった人もあらためて読んでみたくださると幸い。もっとも、今回、無料だったりポイント還元がついたりするのはその『少年ジャンプ』掲載時代のみであるわけですが……。

 『ろくでなしブルース』や『ROOKIES』にもたまにコメディ回があったことからもわかる通り、この作者の「笑い」のセンスは本物。面白いです。

9位『君は淫らな僕の女王』

 このマンガも第一巻および第二巻が51%割引きです。全2巻で完結しているので、実質半額で最後まで読めることになります。

 タイトルはハインラインのSF長編『月は無慈悲な夜の女王』へのオマージュですが、この作品そのものはSFでも何でもなく、ただのエロコメです。

 いやもう、ほんとにただのエロティックラブコメディなのだけれど、何しろ横槍メンゴの美しい絵柄でほとんど破綻しているんじゃないか、これ?というストーリーが描かれるわけで、非常に面白い。

 『推しの子』でファンになった小学生の女の子とかが手に取るとやばいんじゃないかという気もしますが、まあそれも読書の醍醐味だよね。ひとはそうやって扉を開いていくものなのだ。

 最後のあたりはヒロインの理性が崩壊し過ぎてだいぶあたおかな展開になっています。よきよき。

 それにしても「奇才・岡本倫と新鋭・横槍メンゴの異色タッグが贈る、自制心崩壊系純愛エロコメ開幕」と書かれていて、趣き深いですね。いまでは押しも押されもせぬ売れっ子の横槍メンゴだけれど、この頃はまだ新鋭だったんだなあ。

8位『終末のハーレム』

 そういうわけで、『終末のハーレム』。一部の青年マンガ読みのなかではわりと有名なタイトルなのではないかと思いますが、実質的にほぼほぼエロマンガ以外の何ものでもない作品なので、一般的な知名度はそれほどでもないかもしれません。

 人類がなぜか男性のみ滅んでしまい、そのなかでわずか5人だけ生きのこった主人公たちがセックスの限りを尽くす――という、一見、お気楽なことこの上ないストーリーですが、話が進んでいくと一応は物語の陰にある陰謀などがあきらかになっていって、それなりにシリアスな展開にもなっていきます。

 とはいえ、やはりお話の軸は「すべての女の子がきみのもの!」的なダイレクトに欲望に訴えかけてくる設定にあるといって良いでしょう。

 後半になると最初はハーレムに夢中になっていた主人公たちですら、やたらにセックスばかりさせられる種馬あつかいにうんざりしてくるあたりがひとつの読みどころ。

 今回、なぜなのかはわかりませんが、第1巻と第2巻が期間限定無料なので、この機会にとりあえず買っておくと良いかもしれません。

7位『相席いいですか?』

 何もかも理詰めで説明してしまうことで部下から「自分たちのことを機械かなにかだと思っている」と指摘されてしまった女性が、ランチの席で、なぜか号泣している女性と相席になるところから始まるストーリー。

 まあ、「百合」というほどではないにしろ、女性どうしの友情ものですね。これから恋愛ものになったりはしないと思う。たぶん。

 いまとなってはありふれたコンセプトのマンガだとは思いますが、一種の「お仕事もの」として、あるいは「コミュニケーション」において大切なことは何かというテーマとしても、読ませます。いや、むずかしいよね、コミュニケーション。ぼくはぜんぜんできない。

 ちなみに、何もかも理詰めの主人公がやたら胸が大きいあたりが「青年マンガだなあ」という気がしますが、じっさい、バストサイズが大きい女性はふつうにそこらにいるわけで、そういうふうに読むべきではないのかもしれません。ダメな表現規制フェミニストじゃないんだから。でも大きいよね。

 第1巻、第2巻ともに51%ポイント還元となっております。

6位『ALL YOU NEED IS KILL』

 なんとハリウッドで映画化までされた名作ライトノベルのマンガ化作品です。

 これはひとえに『ヒカルの碁』、『DEATH NOTE』などを手がけたヒットメーカー・小畑健の天才的な画力とマンガ力を愉しむ作品といって良いでしょう(打ち切りもたくさんされているんだけれどね)。

 お話そのものはいわゆる「ループもの」のSFで、ほぼ無限にループする能力を手に入れた主人公がその力を使ってしだいに状況に順応し、無敵の状態にまで成長していくという流れなのですが、いまとなってはそこまで新味はないかもしれません。

 しかし、それでもこのマンガは読むに値する。できれば原作と合わせて読んで、どのようにして小畑健がもともとタイトにコンパクトに仕上がっているストーリーを全2巻にまとめあげたのかを確かめてほしいところ。

 いや、小畑さん、あたりまえだけれど、マンガが上手い! 初めは最弱にして凡庸だった主人公がしだいに戦場の鬼へと変化してゆく圧巻の描写をお楽しみください。

 2冊とも51%オフです。

5位『かぐや様は告らせたい』

 いまとなっては『推しの子』の陰に隠れてしまった感もありますが、これも恋愛マンガの大ヒット作ですね。

 初めは「たがいに告白できないエリートの優等生同士がどうにかしてあいてに告白させようとしあう」という、まあまあ面白い設定のラブコメディに過ぎなかったのですが、序盤を過ぎたあたりからこの作家の本領を発揮してきます。

 のちの『推しの子』に一脈通じる非常に複雑で巧緻な心理劇が繰りひろげられるようになっていって、何となく同時代的な雰囲気をただよわせはじめるのです。そこからはもう一気ですね。面白すぎるだろ。

 映画化もされていて、ぼくはファンとして一応は観ているのですが、まあ、それなりというしかない出来だったかな。オススメはとくにできない感じ。

 この作品はほぼ全巻が51%還元のほか、「カラー版」の第1巻は期間限定無料となっています。タダなのでとりあえず買っておいて損はないといえるでしょう。まあ、このあたりはまだ「ふつうに面白いマンガ」くらいのレベルではありますが……。

4位『銀河英雄伝説』

 いわずと知れた『銀英伝』です。基本的には原作のストーリーをそのまま忠実にマンガに移し変えているのですが、ところどころ、藤崎竜のオリジナルな「解釈」がはさまっていて、原作ファンは楽しめます。

 たとえば、いま連載しているオスカー・フォン・ロイエンタールが叛乱に至るくだりなどは、原作と少し解釈が違っている。

 原作では、ロイエンタールは不安定な心理を抱えた末にさまざまな陰謀などもあって最終的に叛乱に追い込まれたという描写になっていたと思うのですが、このマンガではその叛乱が単なる暴発ではなく、むしろかれにとって「解放」であったという解釈になっています。

 ここら辺、原作を擦り切れるほどに読んだひとりとしては「なるほどなあ」と思わせられるところで、原作への深い理解を感じさせますね。さすがというか。

 今回は、なぜか第1巻のみ定価ですが(たぶん、この巻はKindle Unlimitedに入れば定額で読めるため)、その他の巻は51%還元で読むことができます。原作は歴史的名作ですし、この機会にいかが。

3位『ダイヤモンドの功罪』

 いま、最も注目のスポーツマンガです。何十年にひとりといった肉体的な才能に恵まれ、その天才を野球で活かすことに決めた少年の物語。

 というとあたりまえの野球マンガのようなのですが、この「ダイヤモンド」にはまさに「功罪」があり、そのあまりに破格の能力によってかれは周囲の人生を狂わせずにはいられないのです。

 いや、それを「罪」というのはあまりに酷だけれど、じっさい、かれとくらべれば「それなり」に過ぎないまわりの才能たちは、かれと出逢ったことによって劣等感を覚え、狂っていくのですね。

 少年マンガではむしろ「ライバル」キャラクターとしてよく登場するタイプの天才であるかもしれませんが、この作品の独自性は主人公自身はあくまでどこまでも「いい子」であって、傲慢に他者を見下したりしないところにあるといって良いでしょう。

 手塚治虫だとか、美空ひばりだとか、パブロ・ピカソだとか、タイガー・ウッズといった巨大な才能がまわりの人の人生を崩壊させたことを思わず位はいられません。

 第1巻のみ期間限定無料、その他の巻は51%ポイント還元です。

2位『ゴールデンカムイ』

 先日、みごとに完結した『ゴールデンカムイ』も全巻を41%で読めます。この機会にまとめ買いすると一気読みを楽しめるかもしれません。楽しいよね、マンガの一気読み……。

 北海道の地を舞台に、アイヌが遺した「国をひとつ買えるほど」の金塊をめぐって繰りひろげられる血で血を洗う凄絶な戦いを描いたストーリーなのですが、ぼくの分類では「「無価値なマクガフィン」を巡って男たちがひたすらに殺し合う、ニヒリズムが露出する物語」ということになります。

 ぼくはこういうお話が好きでねえ。ちなみに上に挙げた『銀英伝』もほぼ同じ内容だと認識していますね。

 この場合の「マクガフィン」とは、ヒッチコックが生み出した作劇用語で、「物語のなかで奪い合う価値のあるもの」を指す言葉です。だれもが欲する抽象的価値の物質的象徴、といっても良いかもしれません。

 『Fate』での「聖杯」や『ドラゴンボール』でのドラゴンボールが典型的ですが、それがこのマンガでは数千億円の価値がある金塊だというわけです。

1位『推しの子』

 で、まあ、1位は『推しの子』。あたりまえといえばあたりまえすぎるセレクトで面白みがないかもしれないけれど、ここは外せないところ。

 2020年代を象徴するヒット作のひとつですし、何より強烈な現代性を感じるいま最も面白い作品ですから。

 それにしても、このマンガの面白さはどこにあるのでしょう。「母親を殺された少年が芸能界に入って復讐をめざす」という話だけを取れば、むしろ昭和のお話というか、古くさいテンプレートに過ぎないようにも思えます。

 しかし、そこに「転生もの」の要素を絡めるといっきに新しくなってしまう。とはいえ、どうしてそれで新味が出るのか、そもそもこの圧倒的な面白さの秘密はどこにあるのか、ぼくはいまでも上手く言語化することができていません。

 まあ、なんといっても各々のキャラクターがキラキラしていてかっこ良かったり可愛かったりするところが最大の魅力であることは間違いないだろうけれど……。不思議な作品ですね。

 最新刊が41%還元の他は、全巻を51%還元で購入できます。