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【問題解決の三つのプロセス】
この記事は面白かった。
「タスク管理」という技術がある。
端的に言うと、大きな仕事は小さく分けて処理しよう、と言う発想をもとに、「あいまいな状態の仕事を、明確に定義された小さな仕事に分割し、実行可能にする」技術だ。
この「小さく分けて処理」する技術は、ある意味人類の偉大な発明であり、大抵の難易度の高い仕事にこの技術を使うことができる。
数学の問題。
実験プロトコル。
プログラミングやシステム開発。
企業再生。
巨大な橋をかけること。
人間を遠い宇宙に送り込んだりすること。
これらはすべて「小さく分けて処理する技術」を礎にしている。
記事の内容に関してはいくつか疑問がないこともないが、ここで「タスク管理」と呼ばれているスキルの重要性についてはまったく異論がない(ただ、より一般的には「タスク分割」とか「タスク分解」と呼称するのではないかと思う)。
ある程度シンプルな問題ならいちいち分割することなく漠然と対策しても解決することができるだろうが、より複雑に入り組んだ問題はなかなかそうはいかない。
そして人生では「人間を遠い宇宙に送り込んだりする」とまではいかなくても、そうとうに解決がむずかしい厄介な問題が延々と出て来るものなのである。
だから、タスクを分割をできるかどうかは人生のクオリティを必然的に大きく左右することとなる。
ただし、上記の記事ではこういった能力をあたかも生まれつきの才能でしかないように記されているが、ぼくは後天的に習得が可能な技術であると捉える。
このスキルを身につけることで、ぼくたちは一見してとうてい成し遂げることが不可能とも思えるむずかしい目的を達成することができるようになる。
あるいは、そういった、ぼくたちの人生に次々とあらわれてくるあらゆる難問難題の数々は、
①その問題の解像度を上げて具体化し、
②実行するべきタスクを細かく分割し、
③個々のタスクを順番に解消していく。
この行為によってしか解決しないといっても良いだろう。
もし、その種の問題を火を吹くドラゴンに喩えるなら、この三つの工程こそは人類が生み出した「ドラゴン殺し」の方法論であるといえる。
もちろん、そのそれぞれのプロセスでそれぞれの問題があって、この通りにすれば必ず解決するというものではない。
しかし、少なくとも巨大なカタマリのような難題をまえに、茫然と「どうすれば良いんだ……」と立ちすくんでいるよりは、細かく分けられた具体的な問題に対処するほうがはるかに容易だ。
【もしあなたが「モテたい」のなら】
たとえば、ただ何となく「異性にモテたいなあ」と考えているとする。
あなたがとくべつお金持ちだったり美人だったりするのでなければ、あるいはその他の豊かな人間的魅力を備えているのでないなら、この目的を実現するためにも、上記の「①」から「③」までのプロセスを経る必要がある。
まずは漠然と考えている「モテたい」という目的の解像度を上げることである。
つまり、そもそも「モテる」とはどういうことなのか、具体的にどのような状況にたどり着けば目的達成なのか考えなければならないのだ。
この作業を経ずに行動を開始することは、ゴールを決めずにいきなり走りだすようなもので、その時点で問題は論理的に達成不可能になる。
つまりはまず、抽象から具体へ、めざすべきゴールの位置を明確化する必要があるわけだ。
ひと言でファジィに「モテたい」といっても、その言葉が指す内実はいくつもありえる。
恋人を作りたいのか。結婚したいのか。セックスしたいのか。あるいは家庭が欲しいのか。それとも、だれかに恋愛的な意味で自分を肯定してほしいだけなのか。初めにその点を明確にする必要があるのである。
この第一仮定は、必然的に就職活動でよくやるような自己分析になるだろう。自分の心の奥深くにもぐりこみ、赤裸々なほんとうの自分と向かい合って、実際には何を望んでいるのか深く深く考える。
その結果、たとえば「おれは定期的に恋人とセックスを楽しみたいのだ」という結論が出ることもあるだろう。
あるいはいやらしいいい草に思われるかもしれないが、ここで自分をごまかす必要はない。もし、ほんとうに性欲を満たしたいだけならそれをとりあえずの「ゴール」に設定するべきだ。
ただ、その際にはほんとうにあいては恋愛関係でなければならないのか、性風俗やセックスフレンド、あるいは行きずりの人があいてではダメなのかということも考えてみなければならない。その恋人に求める条件も精密に設定する必要があるだろう。
とにかく、この時点で可能なかぎり詳細に、具体的にたどり着くべき「ゴール」を決めること。
ここで、たとえば「そもそも恋愛とは何か? モテるとはいったいどういうことなのか?」といったファジィなことを考えはじめてしまうと、いっきに問題は哲学的に深遠なアポリアと化し、解決はほとんど不可能になる。くり返す。「具体的に」考えろ。
で、この段階で「恋人をつくる」ことが目的になったとして、とてもそんなことは不可能だと考える人もいるだろう。
そうなのかもしれない。だが、少なくとも目的に近づくことは可能である。何か改善を実行すれば、そうしないよりはマシなのだ。
そう、これは重要なポイントだが、問題がとても解決しそうになかったり、目的がどうあがいても達成できそうにないと思えるのは、あなたの視野の解像度が低いからかもしれない。
たとえば、「モテたい」、しかし、「おれはキモメンだからムリ」といった認識はきわめて解像度が低い。
まず、「モテたい」ということの中身を具体化したら、次はその目的に立ちふさがる「キモメン」という「壁」についてやはり具体的に考えなければならない。
「キモメン」とは、具体的にどのような容姿を指すのだろう。ふた目と見れない気持ち悪い容姿のこと? なるほど。
しかし、それは自分の容姿について低い解像度で「抽象的に」考えている表現である。もっと「具体的に」、たとえば目はどうなのか、膚はどうなのか、髪型はどうなのか、体形はどうなのか、清潔さはどうなのか、ひとつひとつ考えていく必要がある。
課題とタスクの分割である。
「キモメン」という巨大なブロックをまえにしてどうしようもないように感じている人も、目前の課題を個々に分割できたなら、たとえばまずは体重なり体脂肪率を一定の数字まで落としてみる、髪型を美容院でセッティングしてみる、膚の清潔感を改善してみるといったことはできるだろう。
そうやって個々の課題を解消すると、少なくともそうしないよりは目的に近づくことになる。そして、それらを実行した時点であらたにまだ欠けている点をチェックし、さらに改善する。
それをひたすらくり返す。何であれ問題を解決するためには、あるいは目的を成し遂げるためには、基本的にそれしかないとぼくは考える。
このように書くと、おそらく「そんなことをしてもムダだ。しょせんキモメンはイケメンには敵わない」といったことをいわれるかもしれない。
しかし、それはまさに抽象的な物言いである。忘れないでほしい。「①」で設定した目的はイケメンにひと泡吹かせることではなかったはずだ。
「①」で決めた目的に近づくためには、どこまで具体的に課題と方法を考えることできるかが勝負といっても良い。
こういった「問題の具体化」の能力はある程度は天与のものであるかもしれない。とはいえ、後から身につけることは不可能ではないだろう。
【ほかの場合でも解決策は同じ】
今回は恋愛や性行為を例に挙げたが、これがたとえば「企業に就職する」でも「年収を1000万円以上に上げる」でも同じことである。
どこまでも課題を具体的に考え、タスクを細かく分割し、あとはそこでPDCAを回す。それしかない。逆にいえば、それができれば、何もしないよりは状況は良くなる。
もちろん、それをやったからといって必ず即座に素晴らしい結果が出るとはかぎらない。しかし、これは断言できることだが、何かアクションを行えば、必ず何らかのフィードバックがある。そのフィードバックを受けて、さらにアクションを行なえ。
人生とは、そうやって少しずつより具体的にマシなものに改善していくものなのだ。ベイビーステップ。
その作業は、たとえばいきなり「海賊王におれはなる!」という巨大なヴィジョンを掲げてしゃにむにそこへ向かっていくといったやりかたと比べるといかにも地味かもしれない。
だが、選ばれし天才海賊ならぬ凡庸なぼくたちには、ルフィのようなやりかたはいかにもむずかしい。
一歩一歩、あるいは半歩半歩、人生を良いものにしていこう。これが、これこそが、個々の人生における絶望と虚無に対抗するための、たったひとつの冴えたやりかたなのだ。
【さいごに】
最後までお読みいただきありがとうございます。
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